くみこ院長ブログ情報

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エピペン 使えますか?

2010年03月27日

今年の二月に、兵庫で、アナフィラキシーショックを起こしている子にエピペンを学校で使ってもらえなかったという事件が報道されました。
“男児は1月15日の給食で脱脂粉乳入りのすいとんを食べた後、目の周りが赤くなる症状や頭痛、嘔吐(おうと)などを訴えた。学校は、エピペンを保管していたが、「注射する取り決めを保護者と交わしていない」などとして使わず、119番。連絡で駆けつけた男児の母親が、学校を出る直前の救急車に乗って注射を打つと男児の症状は軽快し、2日間の入院で回復した。”ということです。
 アナフィラキシーショックを救命するお薬は、今も昔も変わらず”エピネフリン”です。海外では、”Epi!モ、日本では”ボスミン!(商品名)”と救急の現場では叫ばれます。このお薬を注射すれば、真っ赤っかで息も絶え絶えの子供(大人)がみるみるうちに、深呼吸をし、肌の色が白く(ときにまだらに)、また血圧がぐんぐん上がってきます。副作用としては、血圧上昇、頻脈、頭痛などありますが、アナフィラキシーショックを救命出来ることと天秤にかければ小さな問題です。
 アナフィラキシーショックは、ご存じの通り、一刻を争う症状ですので、救急車を呼んで待っている間に取り返しのつかない事になってしまうということもまれにはあります。それで、アメリカで”エピペン”という自己注射のお薬がまず発売されました。普通は、薬を注射するというのは、医療行為に当たるので抵抗もあったようですが、AED(心肺蘇生装置)も誰もが使用できる時代になってきたこともあって、日本でも処方できることになりました。
 でも、エピペンを持っていてもそれを使えないことにはなんの意味もありません。自己注射薬といってもショックを起こして息も絶え絶えの子供が自分に注射など出来るわけがないのです。そう言う場合は、保護者が打つことになりますが、学校にいるときは、代わりに教職員が打っても良いと言うことに2008年4月に通達が回りました。勿論、救命救急士も打つことが出来ます。
 私も先日のアメリカのアレルギー学会で本物のエピペンを”グレープフルーツに”打たせてもらいましたが、かなりのバネの力で出てくるので、”なるほど、ジーパンの上からでも刺せるな。”と納得しました。日本では、高価なため、トレーナーでしか練習したことがありませんでした。
 このような、すばらしい注射薬なら皆、ショックの可能性のある子は持った方がいいのではないか、と思うのですが、日本では”予防薬”の範囲に入り、保険が効かないので高いのです!医療機関によって変わりますが、15000円前後で設定されているところが多いかと思います。また、アメリカからの輸入手続きに時間がかかり、元々2年間の保障期限があるものなのに、手元に届くときには1年しか有効期限がありません。
 このように、高いお金でエピペンを買って学校に預けているのに、ショックを起こしている子に”取り決めがなかった。”とかいう言い訳をして投与してもらえなかったという事にとても憤りを感じました。日本には、”善きサマリア人の法モ(good Samaritan law)「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」がありません。もし、注射をして失敗したら、という躊躇の心があるのが普通かもしれませんが、そこは、やはり先生方への教育が大切だと思っています。エピペンを携帯されている患者さん方へお伝えしたいのですが、自分たちが持っているだけではなくて、今一度自分の子供がかかわる場面すべてのところに、エピペンについての周知をお願いしたいと思います。本当は、医療機関、保険機関がすることなのでしょうが、今の厳しい医療情勢の中、そこまで手がまわらないというというのが現状です。アレルギーに対する認識を深めてもらう一助にもなることでしょう。
エピペンHP:   http://www.epipen.jp/

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