くみこ院長ブログ情報
2016年04月18日
米国アレルギー学会情報第二弾<リスクの高い食べ物は除去?それとも食べさせる?>
食物アレルギーという言葉は20年前は聞いた事がないという方も多々おられました。
私たちが生きるために食べなければならない必要な食物が、身体に不利益な反応、たとえば、じんましん、下痢、咳、重症になるとショックなどの反応を起こす状態を“食物アレルギー(Food allergy)”と呼びます。
もちろん、そのような反応の出る食物は避けなければなりませんが、そのまま一生食べる事ができないのでしょうか?
最近は学会でも考え方が変わって来ており、
“血液検査にて、アレルギーの原因と考えられる食物のIgE抗体が陽性であれば三歳まで食物を除去をする。”から
“なるべく早く食べた方がアレルギーを防ぐことができる可能性がある。“という考え方に変わってきました。
先日ロサンゼルスで開催された、米国アレルギー学会での、イギリスのGideon Lack先生から興味深い研究の報告がありました。
EAT( Enquiring about Tolerance Rabdinuzed trial of introduction allergic food to the breast feeding infant)studyという研究で、
母乳を飲んでいるような乳児に、食物アレルギーを起こしやすい食物、例えば牛乳(ヨーグルト)、卵、小麦、魚、ごま、ピーナツなどを、生後三ヶ月からあえて毎日食べさせて、食物アレルギーが予防できるかということを調査しました。
三ヶ月の赤ちゃんに、ピーナツバターなどを食べさせて、アレルギー反応が出たら、きっとお母さんは、“なんてことするんですか!”と怒られるかもしれません。しかし、この研究では、あえてアレルギーが起こりいやすいものを少量から食べさせ、食べ続ける事で良い免疫が誘導され、アレルギーを防ぐ事が出来るかどうかを1303人で実験してみました。
結果はピーナッツに関しては、3歳までに食べさせ始めた方がアレルギーになりにくいという結果でした。
この大規模は研究は、数年前に出た、ピーナツを生後早くから食べているイスラエル人にピーナツアレルギーが少ないという研究結果を元にして計画されています。
このように、毎年アレルギー科医が世界中から集まって、いかにアレルギーを治療するか、どうやったら食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の発症を防げるかということを自分たちの研究を発表して勉強しています。
学会で発表があったからといって、それがそのまま治療に繋がるとは限りませんが、このように毎年アレルギー治療のトレンドは変わって行きます。
専門医にかからずに、小さい頃にIgEが陽性になったからといって、ずっと卵や牛乳を除去している小学校入学前のお子さんが、春の小学校入学に向けて多数受診されます。
長年していなかった血液検査をし直して、食物負荷試験をすると、実は問題なく食べる事ができた、ということが多いのです。
確かに、10年前は除去療法が主になっていましたが、そのまま除去をつづけるとかえって敏感になってしまう、ということもあります。
IgEは変化して行きます。もしかしたら食べれる可能性もあるので、除去のみをされて、検査・治療をしていない方は専門医を受診されることをお勧めします。